私は高校時代、合唱部に所属していて、入学式、卒業式などの各行事で歌い、文化祭で発表会に向けた夏の合宿に打ち込むなど、合唱一色に彩られた高校生活を送りました。沖縄の修学旅行の余興にクラスで合唱を練習したこと、教室で何気なくアンサンブルしたことも楽しい思い出です。

一方で、将来のことはあまりよく見えていなくて、自信もなくて、「良さそうに見える」目標を掲げているだけで勉強に身も入らずにいた高校生でした。卒業後一年浪人して、改めて物理に楽しさを見いだし、今は博士号(理学)を取得し、研究者をしています。高校時代、物理は一番苦手な教科のひとつでしたが、授業は何故か楽しかったことを覚えています。物理の先生に「君は物理のどこが楽しいの?」と聞かれた時も、まともに答えられなかったと思います。ただ、この楽しいという直感にも似た単純な気持ちが、今も私の研究を続ける原動力でもあります。

ICU高校では女子比率が圧倒的に高かったのに、理系女子となると少数派でした。(クラスに理系女子が集まった時は心強かった!)さらに大学や研究の分野へ進めば進むほど、女子率は低くなりました。男性ばかりの中で最初こそ気後していましたが、いつしかそんなことは気にならなくなりました。というよりは、気にしてはいられなくなりました。形のない何かに遠慮したり、誰かから三歩さがったりせず、私のために私のやりたいことをやろうと思いました。

最近は立場柄、女子学生の理系進学を応援するイベントやキャリアイベントに呼んでもらう機会があります。いわゆるリケジョを増やそうということではなく、女子学生が理系を選択する時の心理的障害を取り除きたい、自由にやりたいことを選んでもらいたいと思っています。やりたいことなんてそう簡単にみつからないし、テレビドラマや漫画の中になんて都合よく転がっていないなぁと思います。だからこそ「これだ!」と思えるものがみつかった若い世代を応援したいと思っています。

22期はそろそろ40歳を迎えようとしています。自分のためだけに一生懸命やっていれば良かった時はとうに過ぎて、後輩や次の世代のことを考えています。ICU高校で合唱に熱中し、進路に悩み、一生懸命だった20年以上前の私と同じような年頃の次の世代が、自分の意志に反して、自分の進路やキャリアを制限されたりすることのないようになればと切に願います。