テレビを見ていたらとあるCMが流れた。ストレートティーをもった女子高生が心の内を喋っている。「みんなといるときはキラキラしてまさに青春って感じ。でも家に帰るとすこし不安になる。…(続く)」CMの最後にはキャッチコピー。”青春はときどき不安だ”。

 

なんだか思い当たる節がある。

 

ICUHSでのことを思い出すと、飽きずに毎日ババ抜きをしてた昼休み、ヨーチカでぐだぐだ喋ったり吉祥寺にプリクラを撮りに行く土曜、若さの限りを尽くして騒いだ後夜祭など、楽しかった出来事が溢れてくる。

 

一方で、そんな楽しい学校が終わった帰り道になると、急に薄暗い気持ちになったりもした。

神奈川から1-2時間かけて通学していた私は、毎日同じ電車に長時間我慢して乗って疲弊したせいか、あるときから帰りの電車で「毎日同じようなことが繰り返す感覚」に囚われるようになったのだ。中央線から多摩川を見ながら「これが虚しいということなのか!」と感情のレパートリーを増やしたりもした。

 

年次が上がるにつれ、例に漏れず将来のことを考え始めた時、そんなことを毎日のように思っていたわたしは、当時読みあさっていたとある著者のエッセイの影響もうけながら、考えあぐねてこんなことを思った。

 

「”生きる”のと”生き延びる”のは違うのだ。未来を生きるために今日を使って、それが繰り返し続いていくだけの人生はいやかもしれない…。ではそうでない人生はどんなものだろう、なんかこう、それは多分生きてる意味が実感できるような日々だ…。」

 

生活する苦労やすごさや楽しさも知らず、なんと大層なことを…と思うが、今よりも輪をかけて頭でっかちで、無知だった当時の私は、結構真剣だった。

 

当時から「それってどう生きたら叶うんだよ!」と自問していたが、答えは出なかった。結局、同じようなルーティーンの繰り返しに多少飽きながらも、未来を生きるために今日を使う日々を送っている。しっかりちゃっかり”生き延びて”、気がついたらあと数ヶ月で30歳だ。

 

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年齢は数字に過ぎないのだが、いざ目の前にするとちゃんと節目なのだなあと思わされる。なんだが28歳ごろから、考え方がいろいろと変わり始めたのだ。

 

例えば、

ジョブズみたいな格好ばかりしていたのが急に着飾りたいと思うようになったり、

マクドナルドが大好きだったのに急に自炊に癒されるようになったり、

自分を外向的な人間だと思ってきたが、実は内向的だと思うようになったり、

恋愛は人生の主要素だと思っていたが、それは幸運が運んでくる人生における部分的に豊かな日々(その長短はひとそれぞれ)だと思うようになったり。

 

なんか考え方かわったかも!と初めて気づいた時、なかなかにテンションが上がった。何十年変わらずやってきたしこのままずっと同じ自分で過ごすと思ってたのに急に考え方変わることもあるのかよ!という発見自体がまず楽しかった。

それから、内面が変わって今までわからなかった種類の喜びも知ることができそうだ!人生、飽きることなんてないな!ずっと新鮮だ!ということにワクワクして、

これまでの経験の蓄積から結論がひとつ導きだされたように感じられたのもとても嬉しかった。

 

これからもどこかのタイミングでこういう変化が訪れるのだとすれば、歳をとるのはなんて楽しいことなのだろうと思う。もはや歳を取らなければ知ることができない感受性があるとすら言えるような気がして、非常にワクワクする。しかもその変化はきっと、わたしのそれまでの経験がなんらかの形で反映されたオリジナルな変化なのだ。なんだか、この変化に立ち会うのが人生の醍醐味といっても過言ではないとすら思えてくる。

 

結果、生き延びるだけの生活はいやなどとほざいていた私は、ただ生き延びることが大好きになった。新しい感受性を知るその瞬間に立ち会うためにどんどん生き延びたい(変な日本語)と思うようになったのだ。当時、呪文のように「”生きる”のと”生き延びる”のは違うのだ…」と思ってはなんだか窒息しそうだったわたしにこのことを教えてあげたくなる(多分、あまり意味はわからないと思う。それはそれでいいというか、わからないほうがいいのかもしれない。)

 

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人生の中でもアラサーというのは、結婚や出産などで生活が最も大きく変わる時期のひとつだ。

実際に、私の周りで出産をするという人が増えた。当時どちらかといえば子供だったICUHSの同級生もいまや子供を産むというので驚きだ(時間はあっという間に経つ)。

わたしにはその予定も目処も願望も実はないが、周りの多くの人のライフスタイルが大きく変わることは私に全く関係のないことではない。多分、話題も興味もみんな変わっていくのだと思う。そんな環境の変化に新しく何を思うのか、どう考え方が変化していくのか、今はそれが結構楽しみだ。