ご飯を食べる前に、1分間ほど、感謝の祈りを捧げる。そんな友達ができたことはありますか?そんなK君と、私はICUの寮で部屋が隣同士になり、頻繁にスマブラをする仲となりました。

 ICUには秋休みというものがあります。ある時スマブラをしていると、彼が自分の母校に来ないかと誘ってきました。そして、私を含め、長崎から来た友人(S)、沖縄から来た友人(M)と共に、この秋学期、山形にある基督教独立学園を訪れました。

 私が彼の学校に興味を持ったのは、このエッセイの下書きを彼に見せたからです。「?」ってなると思います。実は、一度エッセイを書いたのですが、字数制限を無視して書き直すことになったのです。全く内容が違うそのエッセイは今となってはお蔵入りですが、そのエッセイで私が議論した内容に対して、同学園が発行している『独立時報』と呼ばれる新聞の内容が何かヒントを与えてくれているようでした。その内容というのは、私が常に問い、人間が大人になるにつれて問うことになる、あるいは問われることになるであろう「自分とは何か」という問いです。

 これを読んでももちろん答えはないので、このエッセイ自体は、独立学園での3日間の日記だと思って読んでくれると嬉しいです。

  1日目。夜の0時に夜行バスで東京を出て、那須高原で星を見たあと、朝5時に山形県に入りました。夜行バスの停留所から最寄駅までは約2時間で、学園は最寄駅から車で20分の道のりは、学園の先生に送ってもらいました。8時間かけて辿り着き、記念館1棟まるまる貸し切りという待遇に目が飛び出たのも束の間、日曜日のお祈りが始まります。その後は、みんなで校長室を訪ねました。

 一人ずつ何故来たかを話しました。私は、独立時報の内容が素敵だったことも理由ですが、他にもこんなことが引き金でした。スマホ禁止、恋愛禁止、全寮制、冬は全裸で川に飛び込む(友人)、食事もほぼ自分たちで作る。何より、英語で一番下のクラスになっても人と比べることをせず、自分に向き合い、英語を勉強したいとキッチンで勉強をするK君の様子に私は感化されていました。ICU高校で多くの輝く人を見て、臆病な自尊心から自分を隠していた私とは違って、自分より能力があってもなくても一人の人格者として他者と向き合い、自分を見つめるその姿勢です。S君は自身の曽祖父が2度の原爆の被災者であることから平和研究のためにICUにきて、その中で独立学園の理念が何かそのヒントになるかもしれないというものでした。M君は、私たちと仲がいいのもありすが、沖縄と異なる地に行ってみたい好奇心もあったと思われます。

 校長の言葉の中で「人格者」という言葉が出てきたので、そのような言い回しをしました。自分と向き合う、自然と向き合う、そして他者と向き合う、そのためには人格が必要だ、と彼は言いました。その意味を残りの2日間で悟ることになります。

 校長室を出て、鴨の首を掴んで歩く学生がいたのでついていきました。授業でもないのに、自ら育てた鴨を自ら絞める。Uberや外食が当たり前になり、台所がレストランに代替される現代で、命の授業を自らに課してる姿を目撃しました。いつかの本で書かれていた、「己の生を目一杯全うするための命を知る機会が現代には少ない」というのを思い出しました。

 私は現地の学生に天下(個人ドッジボール)に誘われましたが、あろうことか爆睡。目を覚ますと夜7時でした。夕食を食べている中、いろんな学生に「独立学園を一言で表すなら?」と聞いてみました。「家族」「第二の家」と仕込みかと思うほどの回答が返ってきて会話が弾みます。その後は、ニュージーランドからいらっしゃっている先生の家で10時くらいまで、お茶をしました。

 2日目。S君はKと一緒に朝5時から草を刈って、牛に食べさせ、川に飛び込んでいたらしいです。M君と私は寝坊して朝ごはんを逃し、教会に駆け込みました。1日目は、聖書を借りる時間があったのですが、2日目は何も持たず席へつき、「気まず。」と思っていました。説教が始まると、隣の男性がメモ帳を取り出し、聖書箇所を指さして私に「どうぞ」と一言。ついでに英讃美歌も見せてくれました。早く起きて、規則正しく生活しようと思いました。

 その後は、授業を見学し、探求の授業では、男子寮に電気を使わず水撃ポンプと太陽光で露天風呂を作ろうとする少年と会話が弾みました。ダムの話だったり、エネルギー効率の話に私はかろうじて理解を示し、2時間に渡って一緒に装置を考えました。そして、近くの山に登って、内村鑑三の弟子である学園の設立者のお墓へ参り、訪問者ノートを書きました。

 そして、男子寮を見学しました。お湯が出るのは3日に一回、冬は屋上から雪にダイブ、絶対音感の学生が自力で調律するもすぐに狂うピアノ、サンドバッグ。みんなギターがうますぎて感動していると、すぐさまみんな外へ出て牛の世話などの「作業」を始めました。私たちも牛と鶏を見たのち、最後の昼食を食べて、記念館に戻りました。そして先生に最寄りまで送ってもらい、そこから夜行バスで東京に戻りました。武蔵境で朝マックを食べ、旅は終わりました。

 この旅で感じたことは3つ。生を実感できるよう、自分の一瞬一瞬の時間を大事にし、それに感謝しようと思えたこと。比べることよりかは、自分の好きなことに自信を持つことが生き生きとしていること。規則正しく生活して他人に迷惑をかけないこと。です。

 ICUではドキュメンタリの授業が取れたので、課題制作で冬にもう一回行ってみようと思います。また、露天風呂の話が懐かしくなって、旅の後に三鷹の千代乃湯に行ってきました。残念ながら星は見えませんでした。あまり感想部分が少ない事実ベースのエッセイですが、その旅からあなたなら何を感じますか?という質問でエッセイを終わります。