大きくなったら何になりたいか?という質問は誰が始めたか知らないけれど、今わたしは子どもの時には知らなかった職業についている。思えば、大きくなったら何になりたいか問題については、子どもの頃は1つに決められなかった。面白い本を読んだら小説家になりたくなり、オリンピックをみればスポーツ選手になりたくなり、スペースシャトルを見たりワシントンD.C.の宇宙航空博物館に行って宇宙食アイスを食べると宇宙飛行士になりたくなったりした。中学生の頃には、日本の中学生になるのに精一杯で、大きくなったら何になりたいか問題は脇に置いておくことになった。中学の先生に、あなたは英語ができるからICUがいいわね、といわれたり、新聞でICUは大学満足度1位と書いてあるのを見た父にICUなんかいいんじゃないか?とかいわれるうちにその気になり、J枠でICUHSに入学。父は翌年亡くなった。おぼろげに、父のように色々な国に行ける仕事につきたい気持ちになったのはこの頃だと思う。大学は第一志望ではなかったけれど、やりたいことをゆっくり探せる場所だった。大学に入るまで知らなかった美術史を専攻した私は、就職先はなぜか学芸員でなければならないと思い込み、就職活動をせず進学。とはいえ就職氷河期まっさかりで、「つぶしがきく」ように英文翻訳も学んだ。30歳目前になり、縁あって博物館の研究員として就職することができた。今年で20年となる。人生50年、大きくなってなにになったか、の答えが出ているはず。
ところが、いまの私は「なに」とは一言で言えない。すごく大きくくくると「学芸員」なんだろうけれど、翻訳通訳もやるし、広報もやったし、本の編集みたいなこともする。好きな勉強をして、外国にも行き、海外の相手先と交流し、たまに小さい展示をつくる。考えてみると、子どもの頃決められなかったそのままに、いろんな仕事をしている。高校の頃考えていたように、仕事で色々な国に行くことができている。
何を書こうか考えているうち、やっぱりつれづれなことになった。同級生のみんなは元気かな?みんなパンチの効いた人ぞろいだから、わたしの文はひと息つくところ、ということにしよう。