麻衣子からバトンを受け取り、私も簡単に卒業後の経歴と、近況報告を兼ねて最近思うところを書きたいと思う。まず、ICU卒業後は希望大学へ進学し、高校時代の青春だったテニスもサークルで続けながら勉学にも励み、1年間の交換留学(韓国)も経験して卒業。その後は某大手企業に就職し、約6年間勤務した後、第一子出産のタイミングで夫の海外赴任(中国)が決まったため一旦退職。その後日本に戻り、第二子、第三子を授かり復職する暇もなく再び夫が海外赴任(米国)となって今に至る。
幼少期に5年間アメリカで生活していたこともあり、アメリカでの生活はもちろん、様々な国や言語に興味があったので海外で生活できることは私自身大歓迎で、「駐妻」を満喫させてもらっている。これまでも、やりたいことはやらないと気が済まない質で、よく「アクティブ」や「パワフル」と言われてきた。テニスも小学生の頃に始め、第一子妊娠以降は長らく出来ていなかったものの、米国で末っ子がプリスクールに通い始めてからは、約9年ぶりに自分の時間が出来たのでテニスも10年ぶりに再開した。
そんな中、ある時期に湿疹や脱毛、関節痛と言った症状が出始め、病院を受診。こちらは、まずPCPと言うかかりつけの家庭医に診察してもらい、必要に応じて他の診療科へ回してもらうのが一般的な流れ。ただ、他の診療科にスムーズにかかれず、初診を受けるのに数ヵ月~半年以上待つこともあり、予約をなんとか前倒ししてもらえるよう働きかけをする等余計な労力を使うことも多い。私も受診に伴う苦労はあったものの、比較的早く診断がつき、指定難病である全身性エリテマトーデス(通称SLE)と診断された。これまで、スポーツ好きでアクティブに生活していた自分が、難病?とどこか他人事のような気さえして、いまいちピンと来なかった。病気のことを調べてみると、一昔前は5年生存率もあまり高くないような正に「難病」。でも近年は、医療や薬の進歩で生存年数は飛躍的に伸びているし、薬でコントロールしながら付き合うことも十分に可能なことを知り(薬の長期服用による副作用等別の懸念点は有)、あまり悲観することはなかった。だが、驚きはこれだけでは終わらなかった。
SLEの検査や診察を受ける中で、2~3度感じた胸の痛みについて話をした。全身性と言われるだけあり、全身のどこにどのような症状が出るか分からないため、念のため言うだけ言っておこう、と言うくらいの気持ちだった。主治医にも、最悪のケースを避けるために念のため循環器科を受診するよう言われ、受診した。そこでも、問診では問題なさそうだったが念のため心電図とCTを撮ることになった。心電図は異常なし。だが、なんとCT検査でSLEとは関係のない先天性の心疾患が見つかった。すぐに心臓外科に回され、手術が組まれた。幸い、駐在先には大きな大学病院があり、設備もドクターも申し分なく、無事に異国の地で心臓手術を終えることができた。日本だと2~3週間の入院となる大手術も、こちらでは3日で退院した。自分の心臓が、まさか突然死などの危険がある状態だったのかと思うと、これまで何事もなく元気に過ごせてきたこと、SLEを発症したことでたまたま見つけることが出来たこと、更にスムーズに手術して貰えたことは、本当に運が良かったと思う。手術当日、開胸してみたら予定していた手術が行えないことが分かり、より難度の高い術式が必要になったと言うドラマにありそうな展開になっていたことは、意識が戻ってから聞いた話。
このように、この1年で難病を発症し、心疾患まで見つかり手術を受けると言う、全く想像もしていなかった怒涛の1年を過ごす中で、人生観と言うと大袈裟過ぎるような気はするものの、生死や日々の生活について考えることが増えた。病気や事故、災害など、他人事ではない(いつ自分の身に起きてもおかしくない)と、きっと多くの人が頭では思っていると思う。でもやはり、想像と実際にそうなってみるのとでは大きく違う。私も今は症状が落ち着いているものの、いつSLEが再燃するか、その時重症度はどうか、はたまた全く別の病気になるか、それは命に関わるものか、そうなってみないと分からない。でもそうなった時に、自分も家族も少しでも慌てなくていいように、身の回りをなるべく普段から整えておこうと思うようになった。そして、いつどうなるか分からない命、幸せに楽しく生きたい。断捨離をし、自分の気分が上がる物に囲まれて過ごす。そんな些細な幸せを日々感じながら、大切な家族や友人と、なるべく後悔が残らないよう一日一日を大切にしたいと思う。そしてこのエッセイが、読んで下さった方々に、何気ない日常のかけがえのなさを改めて考えるきっかけに少しでもなって貰えたら、このエッセイリレーに参加した甲斐があったのかなと思う。現実は、常には難しいけれど、それでもなるべく毎日プラスな気持ちでハッピーに、皆さまも私も過ごせますように。
次はテニス部仲間の桜、宜しくね。