<とある13期生のあの頃といま>
プレイスメントテストの日は、真後ろに、後日バリバリL1に配置される同級生が座っていて、にこにこ話しかけてくれた。やっぱりこの高校を選んで正解。中2、中3の時に2回も文化祭に来てこの目で見て決めたんだもの。
入学後は、毎日教室が、廊下が、どnativeな英語が日本語と絶妙な混ざり具合で響き渡って狂騒曲のよう。図書館では地べたに座って本を繰っている人がいる。ああ、私はここを選んできたの。私もいつかそうなるの。絶対留学する。
ICU高校2年生の1学期を終え、アメリカ合衆国ニューヨーク州Cheektowagaという町の12年生に。7年生のSarahとPre-schoolのAdam、そしてoperation room nurseのMomとcarpenterのDad。彼らが初めて受け入れる留学生が、私。
英語はL4だったけど、絶対なんとかなるという自信は、秋学期開始早々粉々に。とにかく、American Historyの授業が全然わからない。11年生のクラスなのに。Speakeasyって何よ。地名?人名なの?それとも…?無風、完全なる凪。ベルなんて鳴りやしない。未知。質問する手だてもない。手も足も出ない。出ないのに、みんなの足は引っ張るので、授業の2回に1回は自習室みたいなところに強制送還。めくられるのは辞書のみ。電話帳みたいな教科書はほとんど音を立てない。
MathとScienceでは、豚は木に登る(その二教科は英語力をほとんど必要としなくて、図形や数式、絵図を見ていれば、あ、これ日本で勉強したやつ!と日本からの留学生特権発動)。日本帰国後に「大学は理系に進もうと思うんですけど!」と数学科に突入して行くと、1年生1学期に教わっていたSH先生が「やめておけ!」と間髪入れずに止める。そんな塩梅。
Literatureではなぜか12年生のhonorsクラスに入る。毎週だったか毎月だったか、とにかく1冊読んではshort essayを書く。Mr. Bは本当にいい先生で、私を区別しなかった。いつも丁寧にコメントをくれた。それが張り合いで、私はGenesee Streetの家に帰ると、ひとり洗濯機のあるbasementで集中して書いて書いて書き(直し)まくっていた。
おうちでの英語の先生はMom。OR nurseが何たるかを知らなかった当時の私。でも毎晩夕食を作ってくれた。夕食後のコーヒー&たばこタイムに、キッチンのテーブルにて、father, farther, furtherの発音レッスン。丁寧に根気よく、聞き分けさせてくれ、発音させ分けてくれ、私の英語耳を育ててくれた。
お友だちを作るのも大変。みんなは12年間一緒の小中高で、いろいろ経たあとで固まったランチグループ。7~8人の同時多発的なおしゃべりは、一言たりともコメントできず、この私がquietと言われる始末。授業と授業のあいだも4分。ロッカーで教科書を入れ替えて次の教室に移動するだけ。トイレに行く時間もない、当然socializationの余裕も。友だちに囲まれていたICUHSが恋しくて、泣いた。90度に組まれたbunk bedの死角の方に頭を突っ込んで。スクールバスで通うダサい12年生が嫌で、自転車で学校に行ったもうすぐ卒業の頃。帰り際、芝生で座って話したthe Class sweethearts。その可憐さで、私の話を興味深げに聞いてくれた。あ、もっと知りたいなCyndyのこと…残念、time‘s been up!
1992年夏、東町1-1-1へ舞い戻る。ICU高校とはなんともおおらかな高校で、2年生でも3年生でもどちらに戻ってもよいとのこと。迷わず元の13期生と一緒に卒業する道を選んだ。
今思うと、ICU高校に2年間しか行かなかった、と言うなんとももったいない選択。でもおかげで、50歳になった今、再会するたびに素敵になっている13期生のスマイルに迎えられるこのシフク。あの1年間、日本に帰る日を指折り数えていた。それでも、ICU高校で過ごす1年と、ぜったい遜色なかった。その1年が、その後32年間も私を生かしてくれていたんだもの。そしてこれからの何十年をも。たぶん。
人生、まだまだA面の3~4曲目のような気もするし、X、Y、Z面も通り過ぎてOTK面くらい行っているような気もする。
早く腰を治して、17歳の時のようにjump? leap? fly away? したいヨ。そんな2024年5月。

こころをこめて。

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リレーエッセイのバトンは、男子に回したい、そろそろ。
と思っていたら、見つけました。動揺しながらもOKくれた二神貴弘くん、ありがとう。私とは、クラスもセットも部活も接点なかったし、話したこともあったかな…(あったらごめん笑)
デジタルでつながる世界ってすごいね!それでは、二神くん、バトン渡したよ。スウェーデンリレーのように盛り上がるに違いない!